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ワタシはなぜ"モダンホラー"が苦手なのか

というのがここ数年の個人的な謎の一つだったのだけど、ちょっとしたきっかけで「ああ、ひょっとするとこれが理由かも」と気が付いた。

実を言うと、もともとホラーというか怖いのは大好きで、夏ともなればテレビの深夜枠でやるホラーは見られるときには必ず見てたのだ。吸血鬼、フランケンシュタイン、ミイラ男に、ゾンビだって悪くない。もちろん、日本の四谷怪談も、上田秋成雨月物語の数々も。クラシックホラーファンとでも言えばいいのかな。

ところが、どうにもいわゆる“モダンホラー”は好きになれない。好きになれないどころかパッケージ見ただけで気持ち悪くなる。だから実を言うとまともに見たことがない。怖いとか何とかいう以前の問題。「まともに見ないでなんで苦手だとわかるのか」ということに話は当然なるんだけど、それも不思議なんだけど、どんな話かの噂を聞いた時点で直感的に「これはダメだ」と思っちゃうのであります。

で、その「きっかけ」なんだけど、実は思い出したくないのだ(笑)。あまりにも気持ち悪い物*1をネットで見てしまったんだけど、それは死体写真とかそういう手合いではなく、あるものとあるものの合成写真なのです。両方とも自然界に存在しているものなんだけど、それを合成するとトンデモなく気持ちの悪いものになるんだよね。で、ネットだから当然話題になってて、それを読むと「ほんとなら怖いが合成だから怖くない」って人が結構居て、僕はそれがひどく不思議だったんだけど……まぁ、そのせい(合成だから怖くないって感じ方が存在することを知ったおかげ)で、逆になぜ僕がモダンホラーを苦手としているかの理由がわかったのだけど。

ようするにモダンホラーって人間の匂いがしない、どこか人工的な感じがするってことなんだ。クラシックホラーの場合、どんなに容貌が怪異であっても、人の匂いがするし、存在の弱さとか哀しさみたいなものを感じるんだけど、モダンホラーとか、例の合成写真にはそういう匂い、弱さの匂いがない。変に強靱というか純粋の悪意というか、そういう物を感じてしまうので、怖いという感情よりも気持ちの悪さが先に来ちゃうのだ。

つまり「何のためにそういう物語やビジュアルを作るのか」の理由がわからないから気持ち悪いんだよね。「手段が自己目的化してしまったときの気持ち悪さ」にちょっと似てる感じがするのだ。で、もっと怖いのは、こういうホラーが人気になってクラシックホラーに誰も見向きもしなくなったこと(簡単に言えばクラシックホラーなんて誰も怖がらないってことだ)。

それって、気持ちの悪い「手段の自己目的化」がごく当たり前に横行しているってことの反映だとも考えられるわけで、つまりは、この時代はクラシックホラーが癒しの物語に思えるほどに「強靱に気持ちの悪い時代」なのかもしれない、と。で、そのことにさえ気が付いてない、と。いやースゴイ時代だなぁ。

*1:「それ何?」と思われるかもしれないが、絶対に見ないほうがいいと思うので最低限のことしか書きません。なにしろ僕はそれを思い出すたびに体のあちこちが痒くなるだけでなく気分が悪くなるんだから……ああ、「精神が汚染される」ってのはこういうことなのか、とか、これがひどくなるとPTSDになるんだろうなと思うぐらいなので。