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 もう一つのレイヤー

中沢さんの『アースダイバー』を読み終えた。なかなか面白い。ちょっと「東京再発見」的な面白さがある。アースダイブというと平面的に聞こえるけど、実は「積み重なった時間のレイヤーを掘り進んで行く」というか、今の東京に縄文期の風景を幻視することで、今の東京がなぜこうなのかを読み解く、という感じ。

こう書くとまるで「歴史=終わったこと」として受け止められそうだけど、そうではない。ここで扱われている「時間」の語感は、キリスト教的な始源から終焉までの直線的なそれではなく、あるいは、輪廻転生的な循環的なそれでもなく、並行宇宙的な感覚だ。無数の時間が流れが積み重なっている感じ。時間を線ではなく点としてあるいは3次元として見るような感じ。

古代の哲学(というか思想)に「点は無限である」というのがある。「0=∞」とも表記できる。あるいは「何もないことは何でもあることだ」あるいは「今という一瞬に無限の時間が折りたたまれている(フラクタルな時間?)」と言ってもいいし「時間は非連続である」という言い方でもいい。……まぁ、これだと「レイヤー」という言葉にはあてはまらないけど。

JRで、渋谷から代々木に行き、そこから総武線で千葉方面に行くと車窓からけっこう緑が見える。渋谷から原宿までは宮下公園、原宿から代々木まで明治神宮、代々木から千駄ヶ谷までは新宿御苑信濃町から四谷までは赤坂御苑、四谷から飯田橋までは皇居の外濠に沿って走る。飯田橋から先はビル街になってしまうが。特に電車が四谷に入る直前、赤坂方面への眺めがいい。「時間の裂け目」みたいな感じ。

電車に乗っていると、ときどき「あ、この風景」と思うことがある。写真に撮りたいのだけど、揺れる電車からケータイカメラで撮っても思うような写真は撮れそうもない。しかし、日中に線路に降りて三脚立てて撮影するわけにもいかないし。……つまり、その風景は、毎日見ているにも関わらず「幻の風景」になる。これで高名な写真家であればJRに特別許可を取って撮影して写真集『東京の幻風景』……なんだろうけど(笑)。

そうそう『アースダイバー』に載っている写真がちょっとそんな感じであります。