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レイヤー思考法

ちょっと前(数年前)に『帝国』という本が話題になったことがある。で、当時「アメリカは帝国か」みたいな話がよく出た。たしかに国際政治として今いちばん力を持っているのは疑いもなくアメリカなんだけど、彼の言う「帝国」というのは国際政治というレイヤーでの概念ではない。
それは、コンピュータのOSとアプリケーションのように別のレイヤーの話なのだ。たとえば「OSが帝国、個別の国家がアプリケーション」というような感じだ。といっても、OSとアプリではOSが下、アプリが上になるが、帝国の場合は帝国が上位、個別国家が下位という上下関係になるんだけど。
だから、アメリカという一つの国家をここでいうところの「帝国」と定義することは論理的に不可能なのだ。にも関わらず、どうしてこういう錯覚に陥るかというと、僕らはまだ「国際政治」を一番上のレイヤーであると勘違いしているからだ。
もちろん、世界は「帝国」と「国際政治」の2つのレイヤーで構成されているわけではなく、国際政治の下には国内政治があり、その下には地方政治があり、となる。基本的には「上位レイヤーが下位レイヤーを制御する」という力関係になっているものの、では完全に制御できているかというとそういうワケでもない。

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追記 2005.6.28

んで、ですね。「上位レイヤーは下位レイヤーを完全に制御している」となると、これはもう立派な「陰謀論」になっちゃうワケです。たとえばね、選挙ですよ。選挙を完全に制御できるということは、我々の投票行動を全部制御できる(あるいは不正がある、あるいはそれが可能なポテンシャルを持つ)ということになるわけで「んなこと出来るわけないじゃん」とか言うと、電磁波あるいはマイクロ波で脳波をコントロール……みたいな話になっちゃう。で、これのどこが変かというと、元々の陰謀論というのは「陰謀を暴いて正常な世界にしよう」……だったはずなのに、いつのまにか「この世の中は陰謀で制御されてるんだから何をやっても無駄」という、宿命論になっちゃう。おめぇ、言ってることが違うじゃん! と。

だから、僕は実を言うと「陰謀論」というのを評価してたりするのですね。「評価する」というのは、もちろん「信じる」とは違うんで、ぶっちゃけて言うと「モノを考えるための補助線あるいは方法論として使える」というドライでプラグマティックな話。世の中、なかなか表からだけではわからないわけです。「なんでこうなってるんだろう」とワリとまじめに考えていくと陰謀論にぶちあたる場所に出ます。で、正統な知識人はここでまず「回れ右」をします。それは知識人としてはまったく正しい身の処し方ですが、僕は知識人ではないので「ほう」と思ってそのまま歩いていっちゃう(笑)。でも別に陰謀論を信じているわけではない(笑)。「おお、なるほど、こういう見方もありうるわな」と。……いや、そこでトンデモと一緒くたにしないでくださいね。僕は別に火星の人面岩がどうのとか金星人が云々とか言ってるわけではありませんので。……いや、一般的にトンデモ扱いされているものの中にも「ええ? これけっこうイイかも」というのもあるので、トンデモを十把一絡げに否定するものでもないのですが。

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