N/A

無伴奏シャコンヌ入手

昨日、久しぶりにレンタルビデオ屋に行ったら、なんとセルビデオ屋になっていた。かといって売っている商品は新品ではなく、そこで扱っていたレンタルビデオ。みんな背が色あせている。価格は480円と980円の二種類。ん?と思って探したらありました『無伴奏シャコンヌ』。480円。ずいぶん久しぶりに得した気分。
映画(というよりビデオだけど)は、ずいぶん昔に見たんだけど、いまでも覚えている……というよりは「脳裏に強烈に焼き付いている」という感じ。とはいえ、映画としてどうか、と言われると「うーむ」だ。
この映画を企画したのは実はギドンクレーメルその人で、彼曰く「音楽についての映画を作ったのではなく、音楽をそのまま映画にした」ということで、つまりこの映画の評価基準は映画ではなく音楽である……つまり、映画としてどうか、ではなく音楽としてどうか……なのだ。でも映画は映画であるわけで、この辺がこの映画の評価を困難にしていると言っていいだろう。
ともかく、この映画を見る(聞く)と、音楽(ジャンルを問わず)ってこういうものだったのか……と実感できる。というか、音楽の本質を人々に実感してもらうために、音楽ではなく映画という異種メディアを使ったきわめて実験的な作品なのだ。……が、こういう作品はやはり理解されにくい。我々は映画は映画であって音楽ではない……映画の見方で音楽を見ても「なんのこっちゃようわからん」になるからで、だから、この映画を見るときにはいったん頭の中から「映画の見方」を捨ててかからないといけないのだ。
まぁ、何を言ってるんだかよくわからないと思うので、比喩を一つ。
たとえばクルマに乗り慣れた自動車評論家はたいがい家族向けのミニバンを悪く言う。なぜかというと「運転していて楽しくないから」だ。しかし、ミニバンというのはそもそも「大切な家族を安全に快適に運ぶための装置」であって、運転して楽しむための装置ではない。だから、こんな評価しても何の意味もないんだけど、頭の凝り固まった自動車評論家の人たちは「こんなもんクルマじゃない」というわけだ。……それに似たことがこの映画でも起きているわけですな。

その1.http://blog.livedoor.jp/esatie/archives/cat_188505.html
この映画は見るというよりひたすら聴く映画。音楽監修と演奏がギドン・クレーメルです。最後の無伴奏シャコンヌの演奏15分のために、冒頭からの80分がある、

その2.http://plaza.rakuten.co.jp/outpostofnanasi/3002
この映画は極端に台詞が少ない。だが、主人公が奏でるヴァイオリンの音の一つ一つが、無言の言葉としてこちらに伝わってくる。それは聴く者の頭の中を空っぽにさせ思考を停止させてしまう。その音は皮膚から直に肌の下へと、魂へと染み込んでいき、心を震わせる。そんな音の連なりからなる演奏に貫かれた映像。無駄の無い構成。研ぎ澄まされた台詞と演技。

ま、ワタシもこういう文章が書ければグダグダ理屈を並べなくても済むんですがそういう才能に欠けておりますので(苦笑)
■資料
アマゾンで探したけど、CDは絶版?(在庫無し)になってる。ビデオはあるがDVDにはなってない。しかもビデオは16,800円もする(セル版はなくてレンタル版しかないってことらしい)!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005FU2N/qid=1113750772/sr=8-3/ref=sr_8_xs_ap_i3_xgl15/250-2575421-5904262