1970年代中頃，東京，原宿

まだ明治通りの交差点にはセントラルアパートがあって，昼休みになるとバイト仲間と一緒にビルの真ん中にあるカフェテリアに行ってほうれん草とベーコンのサンドイッチとコーヒーの昼食を...。

セントラルアパートの真ん中といっても，アパートは口の字型で，真ん中は陽の光がさんさんと降り注いでいて，とても明るかった。世の中にはまだインベーダーゲームはなくて，僕らは食べ終わるとピンボールマシンで遊んだり，テーブル型のテレビゲーム……野球ゲームなんかをやっていた。

で，今みたいに禁煙ブームの来る前だったから，僕らはたいがいタバコを吸っていた。ライターは当時出始めの使い捨てライターがおしゃれだった。といっても「チルチルミチル」ではなく，この写真のライター「Criket」か，あるいは「BIC」だった。

さっき，試しに点けてみたら驚いたことに一瞬だけ炎が上がった。

……つまり，なぜか僕の手元にはその30年前の使い捨てライターがあるというわけなのだ。ブンガクをやってる人ならここから短編の一つもひねり出すのかもしれないが，僕にはブンガクテキな素養がまったくない。……そうそう，当時のバイト仲間の一人は「今，小説を書いているんだ」と，ずいぶん前に会ったときに言っていた。じゃ，その小説ができあがるのを待つことにしよう。いつできあがるかはわからないけど。