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 (課題1)ブレーンストーミング用専用ツールを考えてみた

先週、橋本さんへのコメントとして「社内会議は基本的に自動車レースのピットストップのようなものであり、業務を支援する仕事であっても業務そのものではないと考えたほうがいいのではないか」と書いた。しかし、これでは物事の半面にしかならない。たとえば、ブレーンストーミングのような会議はそれ自体が立派な業務になりうる会議である。では、そのいわゆるブレストでデジタルツールがどのように使えるか考えてみた。[松岡裕典
ブレストの奥義あるいは基本はご存じの通り「他人のアイデアにケチを付けない、どんな思いつきであってもマイナス評価をせずに、そこからいい部分を引き出すようにする」である。最初の思いつきは、たいがいの場合、欠点も多くそのままでは使い物にならないが、叩いていけば、そこそこのものになる、あるいは、それ自体は捨てられてもなんらかの副産物が手に入ったり、他の案件へ思わぬヒントになったりもする。
しかし、問題がないわけでもない。会議には必ずリニアな話の流れが存在する。たとえブレストであったとしても一通り思いつきを話したあとは、それぞれについて検討するフェーズにはいるるはずだ。そして、その最中にまったく別の思いつきが浮かぶ場合もある。しかし、それがいかに重要なヒントであったとしても、それをいきなりその場に放り投げたら話の腰を折ることになる。話の腰を折ってまでそれを言い出すにはかなりの勇気を必要とする。
そんな重要な話なら流れを遮ってでもすべきだろう、というのはたしかに正論だし、思いついた本人にその判断が可能であれば、その通りだろう。評価というのは基本的に他人がするものだから、正当に評価すれば重要なことでも、その場の参加メンバーにその評価能力がなければ、たとえ話をしても理解されない場合もある。そうやって、実は非常に重要なヒントが埋もれていくというケースは多いのではないだろうか。
というわけで、そういう場合にはしかたなく手元のメモに書き留める。メモしないと話の流れに流されて忘れてしまうからだが、たとえメモしたとしても最後まで、割り込む隙が出来ないことがままある。司会者が細心の注意を払って参加者の顔色をうかがっていてくれればいいが、話が盛り上がっている場合には何か言いたくてむずむずしている表情も見えなくなる。その結果、そのメモは公表されることなく闇から闇へと葬り去られることになるわけだ(少々大げさだけど)。
つまり、会議にはその場の会話の流れとは別に「参加者固有の意識の流れ」が存在しているということなのだ。もちろん単に「つまんない会議だなぁ、早く終わらないかな」という意識もあるわけだが、中にはその時点での話の流れを根底的に覆すような重要な意識もあるかもしれない。その「見えない意識」を話の流れを遮断せずにすくい上げるツールがあればいいのではないかと思うのだ。
たとえば、手元で書いたメモが匿名状態でスクリーンや手元の端末に表示されるような仕組み。もちろん匿名といっても暫定的に隠されるだけだが、こうしておけば取るに足りない意見は無視され、無視されたほうも「そうか」と思うだけで済む。逆に「お、これは」と思うものがあれば、そう思ったメンバーが議論にストップを掛けて、書いたメンバーに説明を求める。自分の意見を言うために話の腰を折るのは気が引けても、他人の意見を聞くために話を中断させるならそれほど問題にはならないはずだ。
一言でいえば「会議参加者の意識の流れを、その場の議論の流れを損なわないようにしながら表に引き出す仕組み」ということになるが、こういったことをデジタルなテクノロジーでできないかと思っているのだが、どうだろうか。
(Thu, 22 Apr 2004)