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第五弾へのコメント3---「たとえば」「言い方を変えると」「今すぐという話じゃないんだけど」

皆さんのご指摘はとてもよくわかる。昔そういう話を読んで「やっぱり」とか「つまり」あるいは「とりあえず」を使うときには注意するようになったのだが、注意はしていても使ってしまうこともある。[松岡裕典
ところで、口癖あるいは書き癖と言われてすぐに思い浮かぶのは次の3つだ。
▼「たとえば」 ▼「言い方を変えると」 ▼「今すぐという話じゃないんだけど」
「たとえば」は通常、なんらかの論理展開があって、例示をするため、あるいは何かに喩えるために使うが、僕の場合は文頭に持ってくることがある。この場合の「たとえば」は、もちろん「喩え」ではなく「例え」であり、ケーススタディやエピソードを指す。まず具体的な事例を出して、読み手にシーン=コンテクストを想定してもらうわけだ。「たとえばさ、かくかくしかじかってことがあるでしょ? そういう時って▽▽なわけだから・・・」というように使う。
「言い方を変えると」というのは今泉さんの「別の言い方をすると……」と同じ、それこそ「言い方を変え」ただけである。付け加えるなら「言い方を変える」というのは「視点を変える」にも通じるかもしれない。参加者の視点が一方向に揃っている場合、話はまとまりやすい。一見いいことのように見えて、検討が不十分になるという欠陥もある。「ランチに何を食べるか」であれば問題ないだろうが、通常、ある事象の解釈が、ただ一通りしかないということはあり得ない。話があまりに簡単にまとまりそうになる場合には疑ってかかったほうがいい。そういうときには効果があるのではないか。
「今すぐという話じゃないんだけど」というのは、システムの開発作業に携わる時に使う。実際に開発するエンジニアの人たちに短期的なゴールのさらに先を考えてもらうために使うのだ。直接的には時間軸を未来にのばすということだが、心理的な視点が遠くに置かれるために、結果的に全体を俯瞰する機能も持つことになる。作業そのものはトリビアルで部分的なものであっても、全体の中でのその作業の持つ意味がよくわかるようになるから、勘違いとか凡ミスを減らすことができる。結果として短期的な作業そのものの効率アップにもつながるし、後々「そんな話は聞いてない」あるいは「そういう話だったのか」などというトラブルを減らすことにもつながる。
この3つは特に用意がなくても使ってみるといいかもしれない。たとえがないのに「たとえば」と言ってみる。あるいは他の言い方を思いついていないのに「言い方を変えると」と言ってみる(書いてみる)。そして長期的な展望もないのに「今すぐという話じゃないんだけど」と。そう言ってしまうことで、自分を「考えること」に追い込むという効果があるように思うからだ。
(Fri, 12 Mar 2004)