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デジタル読書法(?)のすすめ

少し恥ずかしいタイトルだ。他人に読書法を説くほどの読書家ではないし、デジタルといいつつ写真をご覧になればおわかりの通り、使っている道具はごく普通の紙の本とボールペンとポストイットで、どこにもデジタル機器の姿はない。でもこの方法は本質的にデジタルな方法なのだ(と思う)。[松岡裕典
知人から書評を頼まれた。が、書評を書くのは苦手である。以前にも書いたように記憶力がないというか記憶容量が足りないというか、読んでいるうちはそれなりにあれこれ考えたり発見もあるのだけど、悲しいかな、読んで数時間も経たないうちにすっかり忘れてしまう。いざ書こうとしてキーボードに向かっても1ヶ月前の日記を思い出しながら書くような事態に陥ってしまう。
机の上で読書する習慣があるなら、読書ノートを取りながら、あるいはキーボードに向かいながら、という方法もあるかもしれない。しかし、僕にはそういう習慣はない。死にそうに忙しかった若い頃の癖が抜けず、いまだに本を読む場所は電車の中、歩きながら、浴槽・・・よくて喫茶店あるいは布団の中なのだ。こういう時はもうポストイットしかない(浴槽の中では使えないが)。
まず、名刺大のポストイットとボールペンを本にはさんでおく。読んでいて「これは」と思う場所があればポストイットを貼り付けて、ページ数と気になる箇所の書き出しをメモする。さらに、思いついたこともメモしておく。ケータイで撮影した写真なので読めないが、ここには次のようなメモが書かれている。 ・124(ページ数)/ところである分野(気になったパラグラフの行頭) 以下は書評の一部になるはずのフレーズ断片 ・自嘲気味につぶやく/おもちゃ箱というタイトル/読者によってはここにキラキラと輝く未来を見るかもしれない/彼らは自分のやっていることをほんとうに信じているのだろうか/

以前は小さな付箋をたてるだけだったのだが、その方法では後から見返してもそこに付箋をたてた理由すら思い出せないことがわかって、この方法に変えたのだ。こんな面倒なことをしなくても本に直接書き込めば良さそうなものだが、いくつかの理由でそれはしない。その理由を書き出すと長くなるのでそれはまた別の機会に譲る。
ともかく一冊読み終わったら、ポストイットを全部はがしてA4のミスコピー紙に貼り付ける。それが読書ノートになるわけだ。今回のように書評を書く必要があればそれを見ながら文章にするし、その必要がなければその紙をバインダーに綴じ込んでもいいし、スキャンしてデジタルデータにしておいてもいい。
この方法を「デジタル」と呼ぶ所以は、もちろん「スキャンしたりOCRに掛けてデジタルデータにするから」ではなく「本からコンテンツをはぎ取ってハンドリングしやすい形に変換するから」である。我ながら「デジタルと呼ぶにはちょっと問題があるかも」とも思うのだが、ほかにうまい表現が見あたらないのだ。
(Thu, 27 Nov 2003)