N/A

ナレッジマネジメントシステムとしての書物

ちょっと以前のことになるが「ナレッジマネジメントシステムとは何か」について考える機会があった。何冊かそれらしい本は読んでみたのだが、どうもピンと来ない。それでナレッジ、マネジメント、システムに分解してみたり、それを知識、管理、技法と言い換えたりしているうちに、「なんだ、ようするに本(=書物)のことじゃないか」と気が付いた。[松岡裕典]

いや、正しくは「書物は人間が手にした最初のナレッジマネジメントシステムだったのではないか」と言うべきだ。ナレッジマネジメントシステムの本質を一言でいうなら(少々乱暴だが)、「人間の持っている知識を外部化し蓄積することで、後から誰でも自由に取り出せるようにする仕組み」なのだから。

我々の先達は、まず、声でしか伝えられなかった知識を文字に置き換えることで後世に残せるようにした。さらに、それを巻物ではなく冊子(紙の束)にしてページ単位で番号を振り、索引や目次を付けることでランダムなアクセスを可能にした。そして最後に、印刷術を使って大規模な複製を可能にすることで、理論的には時間や空間に制約されることなく、誰でもその知識にアクセスできるようになった。

しかし、今やその機能の大部分はインターネットをはじめとするデジタルテクノロジー(総称としてのナレッジマネジメントシステム)によって取って代わられようとしているようにも見える。しかし、それは本当だろうか。逆に、書物をナレッジマネジメントシステムとして見ることで、何か見えてくることがあるのではないか。

(Thu, 21 Aug 2003)