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見えない“情報が伝わる構造”を探して。その4

さて、最後はコンテンツの話だが、ここでいうコンテンツとは映画や音楽やアニメなどの“消費財としての情報”ようするに「あー、面白かった」で終わる(目的とする)コンテンツを指すわけではなく、“生産財としての情報”つまりあなたの仕事の実体となる情報(日報、報告書、ビジネスレター、企画書等々)、あるいは仕事に役立たてるための情報(新聞や雑誌の記事、議事録等々)である。
デスクワークというと漠然としているが、その90%はこういった作業、つまりビジネス情報を読んだり書いたりすること、あるいはそれを元に考えたり判断したりすることだと思う。デスクワークとはとどのつまり情報処理業務であり、その業務を効率化するためのツールがパソコンのはずなのだが…。

フォーマットを入れ物ではなくコンテンツの固定部分と考えること

本シリーズその1の図にあるように、コンテンツはコンテンツとフォーマットによって構成されている。というと少々わかりにくいが、送り状などを考えていただけるといいかもしれない。
最近ではあまり見なくなったが、ワープロ全盛期には、日付と宛先と明細部分だけ空欄にしてプリントアウトし、それを大量にコピーしておき、使うときにその空欄の部分にボールペンで書き込む、というスタイルが一般的だった。
フォーマットとは本来、“送り状”全体を指し、文字部分がコンテンツなのだが、これをワープロで打たれた部分までを含めてフォーマット(この部分は変わらないからだ)、ボールペンで記入する部分だけをコンテンツと考えたほうが実際的だ。
つまり、フォーマットを単なる形式・スタイルとしてではなく、コンテンツの固定できる部分をフォーマットに組み込んでしまうわけだ。こうしてしまうと、この「ワープロ空欄穴埋め方式」のようにコンテンツを作ることがとても簡単で単純化できるからである。
この「ワープロ空欄穴埋め方式」、なんとも古風でアナログな方法のように見えるが、ワープロ以前、コピー機普及以前はすべてが手書きだったのだから、これでも画期的な事務処理効率化手法だったし、今でも“手書き部分も含めてワープロで書いてプリンタで打ち出す”よりは、遙かにこちらのほうが合理的だと僕は思う(見た目は少々悪いが)。
「手書きで送り状書くなんて、そんな非効率的なことはしていない」と思われる方も多いかもしれないが、僕はそうでもない。

ワープロ専用機より非効率な、電子メールあるいはITツール

“手書き”というと“ボールペンで紙に書く”というイメージを持たれるかもしれないが、ワープロにしろメールにしろ、ボールペンをキーボードに置き換えただけの話であって“手書き”であることは変わらない(ここでいう“手書き”とは、“文章を冒頭から書き下ろす”ことを指しているから)。
ワープロには“差し込み印字”という機能が用意されているから、昔風の“空欄だけ埋める”という手法が使えるが、メールにはそういったテンプレート機能はない。
もちろんひな形を用意しておいて必要な部分だけ書き換えることもできるが、どのひな形を使うか考えたり、あるいは探したりしなくてはならないから、「面倒だから頭から書いちゃえ」ということになってしまう(僕の場合)。
で、頭から書きつつも、「ワープロ専用機に比較したら、今のパソコンは圧倒的に性能は高いにも関わらず、僕ら(少なくとも僕)のやっていることは、あの時代よりも非効率的なんじゃないか」という疑念がしばしば脳裏をよぎったりするのである。
ワープロ空欄穴埋め方式」なら、ワープロで印字した部分は完全に校正してあるからミスは絶対にありえないし、うっかり書き間違えることもありえない。当然、見直す部分はボールペンで書き込んだ部分だけでいい。
ところがメールの場合、全て新たに書いているから、その分ミスも起きやすい。となれば全体を見直す時間も増えるし神経も使う。
電子メールのやりとりで相手の名前や約束の時間を間違えたりことはないでしょうか。あるいは、空き時間を相手にメールで伝えるためにスケジューラを立ち上げたり、パームを起動したり、あるいは手帳を開いたりする時、「これがIT革命とやらなのかなぁ」と“?”マークが頭に浮かんだりしませんか?…僕はしょっちゅうです。


[2001年06月14日]