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理想の“ワンハンド・モバイル”は携帯電話


■理想は“ワンハンド・モバイル”
僕は大流行のiモードのユーザーである。ようするに約2000万分の1だ。しかし、音声通話もiモードメールもほとんど使わない。使うのは、まず目覚まし時計代わりのスケジューラのアラーム。普通の目覚ましよりもいいのは、何回でも好きなだけ時刻をセットできることだ。バイブレータ機能をオンにしておいて枕の下にでもいれておけば一発で目が覚める。カップラーメンの3分間計にも使えるし。キッチンタイマーぐらいにセットが簡単だともっとありがたいのだけど。
次に使うのはメモ機能で、僕のiモードにはいつも50件フルに入っている。あの小さなキーで入力するのは正直ぞっとしないが、たとえば歩きながら、あるいは電車の中で、「あ、これメモしておかなくちゃ」というときにはこれしか使えない。Palmだろうが紙の手帳だろうが両手が必要だが、携帯電話なら片手でポケットから引っ張り出して片手で入力して片手でしまえる。だから僕はこれを“ワンハンド・モバイル”と呼んでいるわけだ。
ということは、あんまりぞっとしない話だが、僕はそれこそ寝床から満員電車の中まで常に肌身離さずiモードと一緒にいることになる。あとは風呂場にもっていっても使えればほぼ完璧である。……というのは、まぁ余興みたいなものであって、もちろん本題ではない。本題は前々回に書いた、ウェブ版のグループウェアだ。というか、あの回はほんとうはこの話をするつもりだったのが脱線したまま戻れなくなって、そのまま終わってしまったのである。情けない。
僕が使っているウェブ版のグループウェアは『iOffice』という製品で、スケジューラ、WebMail、電子会議室、仕事リスト(TODO)、ワークフロー、伝言所在、回覧板、掲示板、共有アドレス、文書管理、プロジェクト管理などなど、たいがいの機能は用意されているが、この中でiモードでも使えるのはWebMailとスケジューラとTODO、それに共有アドレス……ようするにPIMソフトである。


■データはすべてインターネット上にあり
ここで使っているデータは当然インターネット上のサーバーにある。会社のPCでも自宅のPCでも携帯でも使うデータは1つであり、同期の必要はない。僕が使っているホスティングは安いのでバックアップは自分でやらなくてはならないものの、電源やセキュリティについては、たぶん自分で運用するよりも安全なはずである。そうでないと困るんだけど。
ともかく、これは「こうなってれば便利だろうなぁ」という僕が思い描いていた環境にかなり近い。携帯の中には他人にとってみれば、やくたいもないメールとメモと電話番号としか入ってないから、落としても大丈夫だ。300MBしかないのでPCのデータを全部置いておくわけにはいかないが、これもそのうち安価にGB単位のディスク容量が使えるようになるはずで、そうなれば、PCの中身もアプリだけにしてしまえる。
僕にとって重要なのはマシンでもアプリでもなく、データである。そのデータを毎日もって歩くのは、便利ではあってもそれなりにストレスではある。しかし、かといって自宅か仕事場のPCに置きっぱなしでは不便であり、これもまたこれなりにストレスなのである。データが全部インターネットにあって、好きな時に好きなところから好きな端末で引き出して使えるなら、僕はこういった無用なストレスからは解放されるはずだ。
……が、こういうことを書くとたいがい手厳しい反論を受けたりする。昔からだ。曰く「それはコンピュータにおける中央集権体制ではないか、せっかく個人がコンピュータを持てるようになったのに、そんなホスト中心主義はけしからん。見よ、あのナップスターを、グヌーテラを。あれこそ理想のインターパーソナルコンピューティングだ」と。
いや、まったくその通りだと思う。それは理想ではある。でもね、それができる人間ばかりではない。仮にできたとしても、ただでさえ自分で管理しなくちゃいけないものが増えているんだし、時間にだって限りがある。マシン管理だのファイル管理だのサーバー管理だのに使う時間があるなら、仕事するなり誰かに会う時間に使いたいのです。もちろん、自分のデータを他人のホストに置くことのリスクを考えに入れても。


[2001年03月22日]