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リテラシーの問題か、それとも性格の問題か?

2年ほど前に自分の会社のドメインを取った。取ったのはいいのだが、なにせ個人会社だからエンジニアを雇ってセキュリティ万全の自社サーバーを立てるだけの余裕はない。ホスティングも検討してみたが当時はまだどこも少々お高くて、僕は「うーん」と唸ったきり、そのままになってしまっていた。
しかし、ご存じの通り、ここ1年でホスティング料金もかなり下がり、ようやく自社ドメインのサーバーが立ったというわけ。めでたいことである。メールアカウントは無制限に作れるし、メーリングリストも簡単に持てる。トラフィック量に応じて追加料金を取られるといったこともない。問題はディスク容量の上限が300MBだということだが、これはまぁ仕方ないだろう。
さて、ちゃんと調べずに契約してしまったのだが、そのあとで気が付いたのがオプションでWebのグループウェアが付いていることだった。付いているという表現も変だが、管理者メニューのボタン1つで簡単にインストールできてしまうのだ。説明を読むと携帯電話でのアクセスにも対応しているというので早速使ってみることにした。


情報リテラシー、情報デザイン、ユーザビリティの限界?
ところで、僕はとんでもなくずぼらな人間である。ファイル管理は大の苦手。それが怖くてバックアップを兼ねて同じファイルをコピーしていくものだから、いつのまにか、同じようなファイルが次々としかもあちこちにできていき、どのファイルがいちばん新しいのかよくわからなくなってしまう。それなのに、か、そういうことをしているからか、どちらかわからないが、必要なファイルに限って消してしまったりする。もちろん仕事が終わってからなので実害はないのだが、複数の記憶媒体間のデータシンク(同期)作業なんて怖いしうっとおしい。
というわけで同期という作業の必要な機器は基本的にダメなのだ。初代のザウルスも使ったことがあるが、当時は同期を取るのが面倒ですぐに使わなくなってしまった。データスリムはPCカードなのでスロットに差し込んでアイコンをクリックするだけだから、さすがにザウルスよりは長続きしたもののやはり挫折してしまった。ようするに“2つのデータの同期を取る”……つまりは“同じようなデータが2つある状況”そのものを生理的に受け付けないのだ。
情報リテラシーの観点から言うなら僕は明らかに“落第”である。落第なんて大学時代に経験済みなので別にどうってことはないが、しかし、ほんとにそうなのかとも思う。自慢ではないがコンピュータを使いはじめてそろそろ20年近くになる。プログラミングのまねごとをしていたこともあれば、MS-DOSの入門書を書いたこともある。だから僕の抱える問題は知識ではなくどっちかというと性格に起因する。というか、ファイル管理能力というのはリテラシーの問題とは少々違うのではないかと思うのだ。
では、情報デザインの観点から考えるとどうなるか。“データシンクアプリケーションのインターフェイスを洗練させる”とか”人間は間違うのだからそれを前提にシステムをデザインする”といった解法になるのだけど、そもそも“同じようなデータが2つある状況”そのものを受け付けない僕のような人間にしてみたら、そうやって作られたよくできたシンクアプリも“ブタに真珠、猫に小判”である。僕に言わせればこの状況、つまりは“同じようなデータが2つある状況”そのものをなくす以外に根本的な解はないのである。
なんだか自分の欠点を棚に上げているだけなんじゃないか、という気もするのだけど、情報デザインにしろ情報リテラシーにしろ、それですべての問題が解決するわけでもないと思う。別にそれらをおとしめようというわけではない。むしろ、それらが魔法の杖のように扱われるのはいかがなものか、何ができて何ができないのか、その守備範囲を明確にすることも必要なんじゃないかと思うのだが。……いや、こういう話をするつもりだったのではない。ので、次回に続く。


[2001年03月08日]