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博物館はもともとバーチャルである

博物館に置かれている展示物は、もとあった時間・空間(コンテクスト)から切り離されている、という意味でバーチャルなモノである。複数の文章から単語を切り出して、まったく別の文章の中に並べたようなもの、あるいは百科辞典のようなと言えるかもしれない。だから、展示物に付けられた説明のためのプレートや、再現模型・ジオラマは言うならば擬似的にコンテクストを再現するための試みなのだろう。

さて、この博物館をWEB上で再現するとどうなるか。バーチャルなものをさらにバーチャルに表現するということになる。

たとえば、せっかくというかどうせバーチャルにしか表現できないなら、いっそコンテクスト込みで再現したらどうか、というアイデアが出る。縄文時代の穴居住居を3次元モデル化してVRMLやQuickTimeVRで見る。実物の博物館であればゴーグルを付けて歩き回れるようにする方法もある。……が、実はこれではいわゆる「博物館」にはならない。なぜなら、博物館はバーチャル(コンテクスト抜き)だからこそ成立する、あの不思議な雰囲気が命だからだ。

つまり、WEB上のバーチャル博物館というのは、実際の博物館の持つ不思議な雰囲気と、実際の博物館では不可能な「コンテクストの再現(たとえ擬似的であっても)」の双方を満足させるものであるべきだろうと思うのだ。

Date: Wed, 10 Sep 1997 10:06:48 +0900