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新しいスタイルを可能にするDTP

少し長い前書きになったが、今回はソフトウェアとしてのDTPではなく、出版スタイルとしてのDTPの話である。
今まで16ビットパソコン(PC98)の様々なDTPソフトを試して、使いにくいだの遅いだの文句を言わせてもらってきた。それはそれでそれなりに意味のあることだと思ってやっているけれど、DTPの本質という観点からすれば、もっとも重要なのは文字データを始め、画像データや割付情報、全てを電子データ化してしまえるということだ。
全てを電子的なデータにしたところで、その場でプリンタに送って印刷したのでは、やれ印字がきれいだ、汚い、速い遅いという話にしかならない。
しかし、これを電話回線を通じて遠くのプリンタに送ることを考えたら、その意味合いはかなり違ってくるはずだ。
例えば単行本1冊分を電子データにすると、かなり分厚いものでも2HD(うまくすれば2DD)のフロッピーディスクに収まってしまう。10万円台で手にはいる20MBクラスのハードディスクなら20冊前後の単行本が入るし、CD-ROMに至っては1枚に500冊以上の単行本が入ってしまう(もちろん現在のCD-ROMは書き込めないから容量の参考資料にしかならないが)。
小さな出版社にしたら充分すぎる容量だ。在庫を保つための高い倉庫代は全ていらなくなる。机1つ分のスペースで、数万冊の単行本のデータをストックできるのだから。
次に、これを電話回線につないでみる。こうすると、外から(国際電話を使えば海外からでも)このデータを引き出すことができるようになる。引出し先にレーザープリンタを置いておけば、そこで電子データとして眠っていた本」が目を覚まし、白い紙の上に蘇る。ことになる。
DTPは「物質電送機」と同時に「コールドスリープ」のための、とてもSFチックなソフトウェアだったのだ。