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:やっかいなアナウンス効果

たとえば知人に「どこそこのイタメシ屋はおいしいよ」などと言われる。で、いそいそと行ってみると、悪くはないが「おいしい」というほどでもない。ということが結構ある。
どうしてそういうことが起きるか、どこが違うのかと考えてみると、知人の「おいしい」という一言があったかどうかだ、ということになる。その一言が「期待値」として記憶にインプットされて、実際に食べたときにその期待値と実際が、無意識のうちに比較され「悪くはないが云々」という結果を導くことになっているのだろう。だから、同じ店に「なんの予備知識もなくフラッと入った」としたら「結構、おいしい」と思うかもしれないわけで、こうなると「おいしい、まずい」という評価というのはなかなか難しいということになる。
もちろん、嗜好の違いという問題もあるわけだけど、ここでは仮説として知人は僕とまったく同じ嗜好だと仮定しておく。そうしないと話が成立しない。ともかく、そういう事情がわかってくると、そうそう気安く知人に「あそこ、おいしいよ」とは言えなくなってくる。やっかい、というほどの問題でもないが、かといって無頓着だと「あいつの舌はたいしたことがない」という望まざる評価を受けかねない。
(ここから「ブランドの心理的価値」に持って行くこともできる。その店が誰それも推薦しているとなれば、「おいしい」と言った知人の舌は「客観的に見て正しい」ということになるから。でもそこまで引っ張るかどうか……)