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15 デザイナー的芸術家のススメ

NuDI1997-06-15


芸術家が「自分の意図によって素材を作品化する」のが仕事だとすれば、デザイナーの仕事は「素材そのものの良さを引き出してやること」だと言える。僕らが芸術家になるのを諦めちゃうのは、この「自分の意図」ってやつが、ない、あるいは、わからないからなのだ。「何を描いていいのかわからない」って。

でも「素材の良さを引き出す」には、自分の意図なんか要らない。そこにポコッと何かがある。じーっと見つめる。「あ、これ、ここがきれいだな」と思ったらその部分をうんと強調してやればいい。うまく行くかどうかはわからない。でも、この訓練を繰り返していけば、だんだん腕は上がっていくはず。

つまり、素材なんて何だっていいのだ。その気になって見れば、部屋の中にあるありとあらゆるモノが素材に見えてくる。その時点で、あなたは感性の上ではもう立派な「デザイナー的芸術家」になってしまってる。腕のよしあし、他人を感動させられるかどうかは、その先の話。いまから考えてもしようがない。まずは自分が楽しむこと、快適であることさえ満足させられれば十分なのだ。

ほら……なんでも「作品」に見えてくる。飲み終わった牛乳の紙パック、潰れたコーラの缶、灰皿の中の吸いがら、捨てようと思っていた古雑誌。そう、デザイナー的芸術家は、もうもったいなくてゴミが捨てられなくなってしまう。で、学生時代の僕はゴミ袋の積まれた6畳に寝起きしていたのだった。

[写真説明*1

*1:何の変哲もないシャンプーボトルです。ごみ箱に持っていくのが面倒でそのまま風呂場に溜めてて、ある日、浴槽に浸かって眺めていたら、大きいのがお父さんでちょっと小さい(リンス)のがお母さん。細目なのがお兄ちゃんお姉ちゃんで、旅行用は赤ちゃん……のように見えたのです。お父さんとお母さんがお互いにそっぽを向いてるように見えなくもないですが、題して「家族」。 写真に撮った時点ではボトルには製品名が入ってますが、Photoshopで消してしまいました。実物は特殊な方法で印刷してあるので消せないのです。日常見慣れたモノも写真にしてコンピュータに取り込んでPhotoshopで加工すると面白いです。こういう「ささやかな作品」を集めたWEBサイトってのも面白いかもね。