N/A

 藤沢にて


その日、僕はポプコンの取材(予選会じゃないかと思うけど)で、藤沢の公民館に出かけた。ゲストが2組。あみんが先で中島みゆきが後。中島みゆきがステージに出た途端、それまでざわついていた客席の意識が、彼女に向かって、まるで一直線のラインが見えるほどに集中していくのがわかった。「時代」はもちろん知ってはいたけど、これほどの力があるとは知らなかった。帰り、僕は東海道線の上りホームに居た。そして、ふと前を見るとそこに彼女が居た。ほんの数秒目があったことは覚えているが、その後は覚えていない。


だから、そこで、この物語は何の展開もないまま終わる。


本棚のクリアフォルダを漁っていたら1976年の大学ノートが出てきたのだ。見開きで1ヶ月のスケジュール兼日誌になっていて、僕はその10月のページでそれを発見したのだ。しかし1976年といえば僕はまだ大学生だ(かなり長期間居たのだけど)。その大学生がなんでポプコンの取材に行っていたのかよくわからない。一人で行ったのだから当然原稿も書いていたはずなのだけど、そんな記憶はもちろん、ない。


ところで、彼女が僕の住んでいるところから歩いて15分ぐらいのところに住んでいることをついこの間知った。